父になった日

2019年11月某日、父になった。


前日に破水して入院した翌朝、
妻「あと1時間くらいで産まれるみたい…」
陣痛で苦しそうな妻からLINE通話を受けた。

フレックスタイム制といえば聞こえはいいが、とにかくそのあたりが自由な中小企業に勤めているため、
私「今日中には産まれそうなので遅れて出社します」
社長「おk、今日は出社しなくてもいいよ」
こんなにカンタンなやりとりだけで妻の元へ向かえた。
本当にありがたいことだ。

私が到着すると妻の横で助産師さんが着々と準備を進めていた。
今までに感じたことのない緊張感。
私も妻も初めての経験で、不安がものすごくあった。
妻はその時34歳、12月が誕生日なので、産まれるのが1ヶ月遅かったら高齢出産といわれる年齢になっていた。

助産師「はい、じゃあそろそろ始めますよ! ご主人立ち会うよね?」
私「あ…はい」

妻から事前に「恥ずかしいから立ち会わなくていいよ」と言われていたのだが、助産師の勢いにイエスマンになってしまった。
ベテランはやはり強い。
妻の表情を伺うと、「いるならいてもいいけど」というアイコンタクトを感じた。
後で確認したらこれが当たっていたのでよかった。

ほどなくして先生がやってきて、いよいよ始まった。
私は妻の左横に立って、助産師に指示されるまま妻の腰の下に手を入れた。
これが赤ちゃんの動線のサポートになるらしい。

それから約20分後、
オンギャー!!!!!
大きな産声が響いた。
なんというか、頭からデュルリと出てきた。

先輩たちに聞いていた話では、感動で涙が出るとのことだったが、私も妻も一滴の涙も出なかった。